【2019年夏時点での自己紹介】 2010年に31年勤務しましたANAを早期退職。25年間野鳥観察に通い詰めた根室市に移住しました。2010年7月には「根室市観光協会のバードウォッチング観光自己紹介

2012年8月31日金曜日

2012年8月31日(金)  130,668
<英国バードフェア参加報告その1> By イーグル
大変ご無沙汰しておりました。今日から、道東の野鳥情報ブログを再開させていただきます。
去る8月17日ー19日の3日間、英国ロンドンから北へ車で3時間のところにある”Rutland Water"と呼ばれる風光明媚な湖の畔で開催されました「第24回英国バードフェア」に参加してきました。
道東根室地域からの出展営業は今年で8年目。東京の旅行代理店である「阪急交通社国際インバウンド部門」との合同参加でした。北海道からは、根室市役所商工観光課長・知床羅臼観光協会事務局長・北海道庁観光局国際観光グループ主任とイーグルが参加しました。東京からは阪急交通社の国際インバウンド担当・高名な鳥類学者であるマーク・ブラジル博士が参加。ロンドンからは現地の野鳥観光取扱いの専門家などが参加。現在、日本への外国人バーダー誘致活動の最前線で活躍されている精鋭の皆様が一堂に会し、「日本ブース」の運営・営業活動を展開致しました。
英国バードフェアは今年で24回目で、今年は3日間の会期中に3万人以上のバーダーが訪れました。日本ブースの評判も上々で、特に、鶴の折り紙や書道実演などがお客様の関心を集めていました。もちろん、日本の野鳥、特に道東の野鳥を世界に紹介し一人でも多くの外国人バーダーに日本に来ていただく事が出展目的ですので、道東の野鳥観察の時期・場所の紹介(種別に)や具体的旅行行程の組み方・お勧めの宿や英語野鳥ガイド(有資格者)の紹介など、かなり実用的なアピールを積極的に実施しました。
 ☛今回、新しく作成した「英文パンフ」(後日、ブログでも紹介いたします)の評判も上々でした。
その甲斐もあってか、日本ブースを訪れる人波は3日間途絶えることはありませんでした。3日目の午後には、スタッフ全員がぐったり。でも、みんなが全力を出し切ったという爽快感を感じることが出来ました。

3日間の会期を通して、大いなる刺激を受け、以下のような感想・考察・意見を持ちました。
世界の野鳥観察旅行マーケットは予想以上に大きい。英国だけでも300万人のバーダーがいるらしいが、ほぼ全員が「富裕層」である。一人あたりの外国へのツアー価格は30万円から100万円のコースが売れ筋。行先も、西欧・北欧・アイスランド・東欧・地中海などの売れ筋の目的地に加え、中東・アフリカ・南北アメリカ・カナダ・インド・モンゴル・オーストラリア・ニュージーランド・南極などの人気が高く、沢山のツアーが催行されています。ただ、残念なことにアジアはシンガポール・香港などの旧英国植民地を除き、まだまだ、未知の世界という面が強い。日本はその代表格の国とみなされています。ただ、決して日本が避けられているのではなく、逆に「関心はあるのだが肝心の野鳥観察に関する情報が発信されて来ない」「情報があっても英語野鳥ガイド不足など、受け入れ体制の整備が遅れている」「円高が渡航・滞在費を吊り上げている」事などが原因のようです。
  ☛この点は深刻。そもそも、今日まで日本の「野鳥業界」は世界からのバーダー誘致に目を向けて来なかった。外国から見ると、日本での野鳥観察は「鎖国」状態にあるわけです。そろそろ、日本の野鳥関係者もグローバルな視点を持つことが必要なのではないでしょうか? 例えば日本人による「英語版日本の野鳥図鑑」(写真図鑑を除く)が存在しないことは「日本の恥」と言っても過言ではありません。中国も韓国も台湾もベトナムもマレーシア・タイ・シンガポール・フィリピン・インド・スリランカ・ミヤンマー・ネパールも、自国の野鳥を英語で紹介する立派な図鑑を刊行しています。日本だけ英語図鑑が無いのです! 日本を訪れる世界のバーダーはブラジルさんの東アジア図鑑に頼りっきりです。
日本からの出展は「道東ブース」と光学機器メーカーさんだけです。対する他の国々には、国を挙げて外国人バーダーの誘致に鎬を削っています。フィリピンなどは、かなりの国家予算を投入しているらしく、大きなブースで派手にアピールされていました。やはり、日本の「他の地域」や「国=観光庁さん」などにも、外国人旅行者誘致の観点からももっと世界情勢に関心を持っていただきたいと思いました。国内産業が低迷し、失業の問題が深刻な今の日本。もっと外国人旅行者を誘致し、外貨を稼ぐとともに、新たな雇用を創出してゆく1手段としても、「野鳥観察旅行」は使える!と思います。 今年はじめて北海道庁が担当者を派遣して来られたことは大きな1歩前進です。
英国バードフェア開催の狙いは、「バードウォッチングの普及」というようなレベルをはるかに超えています。世界の野鳥関係者が一堂に会し様々な商談を進めるという、言わば国際モーターショウ・国際トラベルフェア・国際航空ショウのような位置付けにあります。世界のプロの野鳥関係者がバードウォッチングを「一大産業」とみなしていることが、会場の熱気からひしひしと伝わってきます。市場規模は正確な数字はありませんが、例えば、英国の1つの野鳥保護団体であるRSPB(英国バードフェアの主催団体。会員数100万人超。)の年間活動予算が180億円に上ることから推定すると、旅行・光学機器・写真・絵画・衣料品・小物・交通・出版・研究・保護活動など市場は多岐に渡っており、少なくとも数千億円の市場規模があると思います。
道東ブースでは、「道東」だけではなく、「出水(鹿児島)」「東京近郊」「地獄谷温泉(長野県)のスノー・モンキー」「沖縄」の問い合わせが非常に多かった。これらの地域のご紹介・ご案内も、慣れない道東のスタッフが行っています。出来れば、この地域の野鳥関係者・行政機関・観光協会などからも人を派遣していただければ助かります。
英語を話せる野鳥ガイドの養成が急務だと強く感じました。野鳥が素早く識別できる事は最低限ガイドに要求される能力ですが、それに加え、「日本の領土内」で「外国語で」かつ「有償で」野鳥ガイドを行うには、日本の国家試験に合格し「通訳案内士」の資格を取る必要があります。
  ☛時々、この点に違反していると思われる事例を探鳥地で見かけますが、法律違反の可能性があり、50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。また、英語を母国語とする外国人バーダーでも、日本の領土内で、無資格で有償ガイドをすることは許されていません。
*台湾在住の野鳥ガイドのWさんは日本の通訳案内士試験(中国語)に合格されています。苦労して日本語を勉強し、日本語でしか出題されない日本史・地理・一般常識の試験対策としては、段ボール箱3箱分の資料を暗記したそうです。
  ☛「通訳案内士(英語)」試験の合格率は15%前後であり、英語力は英検1級レベルが必要です。その他、「日本歴史(歴史検定2級レベル)」「日本地理」「一般常識」「英語による日本的事象の説明面接」に合格する必要があります。内容は、多岐にわたり日本の風物・歴史的事象・政治・経済・文化・宗教・寺社仏閣・絵画・食べ物・年中行事・スポーツ・家庭生活・学校制度・雇用情勢などなど、外国人が来日した時に質問したくなるような項目を広く外国語で説明できる事が必要です。
ところが、この試験には「日本の国鳥は?」とか「道東の天然記念物の白・黒の大型鳥類は?」ぐらいしか、野鳥に関する問題は出ません。野鳥専門ガイドを目指す者にとっては、「大いなる遠回り」が必要であり、改善が必要だと考えます。
ただ、「もぐり」で有償ガイドをする事は厳に慎むべきだと思います。悪法を無視するのではいつまでたっても改善の機運が高まりません。まずは資格を取り、そのうえで有資格者が法律の改善を国に求めてゆく、というのが正道でしょう。
**イーグルは苦しみながら受験し、3年前に合格しました。取ってみてわかったことですが、外国人バーダーをご案内する際、その受験準備で培った知識が非常に役に立ちます。日本的事象に強い関心を抱くような高い教養を有する人たちが外国人バーダーの多くを占めているからです。ガイド役は日本の説明役・民間外交官のようなものです。日本的事象に関し最低限の知識を有し、英語で説明ができる事は、日本人として当たり前に必要な事なのかもしれません。
北海道の場合、外国人バーダーを自家用車でご案内することがよくあります。無償のご案内は問題がありませんが、有償でガイドする場合には「2種免許」が必要です。個人での緑ナンバーの取得方法が確立されていないという地域の行政上の不備が散見されますが、とりあえずは、2種免許だけは必要とされています。これも取得には時間と費用が掛かります。
**イーグルは根室への移住に際し、思い切って35年ぶりに自動車教習所に通い、普通2種免許を取得しました。取得してみて、やはり、この資格も必須だと感じました。高度な運転技術に加え、お客様の安全・快適な乗車を実現する「プロ・ドライバー」の証です。プロの野鳥ガイドを志すなら、2種免許の取得はMUSTだと思います。
以上の様に、外国人バーダーの受け入れ態勢整備の要諦は「英語ガイドの養成」にありますが、⑤⑥で述べたような、法律上の「大きな壁」が存在することも事実です。ただ、その壁を「避ける」のではなく、「果敢に挑戦する」バーダーが今の日本には必要です。この点を、避けているうちは、①で述べたような「鎖国状態」から日本が脱することは出来ません。ただ、「通訳案内士試験」の出題内容に、なぜか「自然」「花」「草木」「野鳥」「海洋生物」「魚」などの分野が含まれていないことも事実です。この点を改善し、自然ガイドを目指す方が一般ガイドを目指す方に比べ不利にならないような出題上の「改善」「工夫」が望まれる所です。
  ☛日本人・外国人を問わず、日本で外国語での有償野鳥ガイドをなさる皆様! 「もぐり行為」はいけません。まずは有資格者となってください。そして、仲間を形成し、日本のガイド環境やガイド試験の改善を図って行こうではありませんか!
2種免許を取得してわかったことですが、個人でガイドをするための「緑ナンバー」の取得方法・指針が、法律によって確立されていません。道東には個人タクシーの取得方法も明確化されていません。皆様の地域はいかがでしょうか? これでは、企業としてのタクシー会社しか「有償旅客運送」をできないことになります。タクシーを使って外国人バーダーをご案内することが、どれだけ高くつき、現実的ではない事は、バーダーであれば誰でもわかることです。長年のうちに、行政が企業タクシーの競争秩序の維持にのみ注目し、個人での有償旅客運送の道を閉ざしてきた結果、最もニーズが高い北海道においても、ガイド業の育成を阻む結果を招いています。個人の観光タクシーが京都にあることは聞いております。一度調査してみようと思います。ただ、この問題の本質を見抜く目が必要です。私の言う「個人による有償バーダー輸送」を可能とする政策転換時には、「安全性の担保」と「適正な利益の確保」「雇用の創出」が最も重要であり、その次に「業界の秩序維持」が来るべきです。自然ガイドは悪路・山道・雪道などを走行することが多い。その点で専門的運転訓練や講習などを課していただいても結構です。むしろ、北海道等にはこのような訓練・講習はもともと必要なのです。極端なディスカウントを規制することは必要ですが、タクシー業界の利益を守るという観点のみで判断するのではなく、「新たな雇用の創出」の観点から、「個人ガイド有償旅客運送制度」の確立を行政に強く求めたい。

以上、色々と書きましたが、外国人バーダーの日本への誘致活動は、これからも決してあきらめずに粘り強く推進してゆきたいと、決意を新たにした「英国バードフェア」参加でした。

英国だけで300万人がバーダーです。しかも富裕層。そのうちの10%が、もし日本に来てくれたら30万人です。(日本野鳥の会の現会員数は約3万人と推定) 日本のバーダーの数が激減している中、来日外国人バーダーの数が日本のバーダーの数を超える事は容易と思われます。日本野鳥の会は「外国人支部」(WEB上)を創設すべきでしょう。 
英国に加えアメリカその他の国からのバーダーもいます。しかも、経済的に恵まれた教養・学歴・社会的地位の高い富裕層です。経済効果に加え、彼らに日本の豊かな野鳥・自然への理解を深めていただき、国際社会における日本のレぺテション向上につなげたいのもです。また、低迷する国内雇用市場の改善に少しでもつながればと思いました。

次回のブログ投稿は、英国バードフェアの様子を写真でご紹介いたします。乞うご期待!





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